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ウェブルートの記事が「ニューヨークタイムズ」紙に掲載されました。(>2010年10月21日掲載記事の参考和訳)

セキュリティ ソフトウェアの宣伝広告、親しみやすさを前面に

Andrew Adam Newman
掲載:2010 年 10 月 21 日

ここ数週間、ミネアポリス近郊のルート 7 沿いの看板広告で、風変わりな光景が展開されている。毎週 1 回、ペンキ職人が看板の高さまで上り、看板左側の一部分を塗り替えているのだ。ある週は緑色、翌週は赤色、そのまた翌週は青色といった具合だ。

看板には次のように記されている。「ペンキ乾燥中。これでも、マルウェア防止について説明した広告よりは面白いと思う」。

これは、創業 13 年のウイルス対策ソフトウェア メーカー、ウェブルート (本社: コロラド州ボルダー) が新しく始めた広告キャンペーンの 1 つだ。同じシリーズで、人工芝の大きな一片を本物の芝生に見たてて貼り付けた看板 (「芝生養生中。これでも、スパム除去について説明した広告よりは面白いと思う」) や、床板を貼り付けた看板 (「合板成形中。これでも、スパイウェア検出について説明した広告よりは面白いと思う」) もある。

同じくボルダーに本社を置く広告会社 TDA Advertising and Design が企画したこのキャンペーンは、コンピューター セキュリティの広告手法に関する従来の枠を超えている。これまでは、個人情報盗難などの悪事に対する恐怖心をあおり、そのための防御策として製品を売り込むという手法や、フィッシング、キー ロガー、マルウェアなどの専門用語を使い、コンピューターに詳しい人の感性に訴えるという手法が多かった。

自虐的とも思えるウェブルートの広告だが、そのきっかけになったのは、消費者から得た意外な声だった。

ウェブルートの最高マーケティング責任者 Chris Benham 氏は最近、米国と英国のセキュリティ ソフトウェアの利用者 2,400 人を対象として、あるオンライン調査を実施した。ウイルス対策ソフトウェアに関する 18 個の設問について、どの程度強くそう思うか (あるいは思わないか)、度合いを答えてもらうというものだ。

その中にこんな設問があった。Benham 氏自身「埋め草の設問」と呼び、さして気のない回答が返ってくるものと予想していた問いだ。「セキュリティ ソフトウェアが保護している対象が何なのかをユーザーがきちんと理解できるよう、メーカーは専門用語を使わずに説明してほしい」と思うかどうかを尋ねた設問である。

Benham 氏の予想に反し、この設問に対してそう思うと答えた回答者は、設問全体のなかで 3 番目に多かった。これを上回ったのは、ネット上の悪党から子どもたちを守ることに関する設問と、コンピューター ユーザーが一般にオンライン セキュリティの問題を甘く見すぎているという設問だけだった。

Benham 氏はこう話す。「この調査結果を目にしたときには、まさに驚愕でした。ユーザーは、製品の技術的特徴への関心よりも、製品の利用で得られるメリットへの関心の方がずっと大きいのだと、我々はすぐに認識を改めざるを得ませんでした」。

ウェブルートが全米に展開している広告キャンペーンでは、専門用語を使いつつも、それをジョークの種にしている。

たとえば、同社が雑誌に出している全面広告や見開き広告はこんな調子だ。まず見出しとして、次のような注意書きがある。「いかなる場合も、この情報を立食パーティーの話題として使ってはいけません」、「この広告の全文を読むよう戦争捕虜に強要することは、国際法違反にあたります」。

後に続く本文は、よくありがちな次のような説明文だ。「コミュニケーション シールドは、DNS 検索をすべてチェックします。マルウェアをホストする Web サイトや、ボットネットの制御に使われているドメイン名へのアクセスでないかどうかを調べ、ブラウザーがページを読み込んだり、実行中のマルウェアがペイロードを取得したりする前に、危険なサイトを無効化します」。

そして広告の末尾に、このキャンペーンのキャッチ コピーがある。「技術的なしくみなんて誰も気にしない。肝心なのは、正しく守ってくれること」。

ウェブルートがこれまで広告を出してきたのは、パソコン雑誌「PC World」など、IT 系の出版物ばかりだった。しかし今度のキャンペーンでは、「Fortune」や「Fast Company」などのビジネス雑誌や、「Us Weekly」などの生活雑誌にも広告掲載を予定している。

同社は、ネット上の対話型広告も同じ路線で展開している。スーツ姿で演壇に立つ同社最高技術責任者 Mike Kronenberg 氏の写真と、別の 1 人の写真が並んでいて、どちらかをクリックすると動画が見られるというものだ。たとえば、ある広告では、両腕の力こぶを誇示する女性ボディビルダーの写真が並んでおり、「データ同期について最高技術責任者から話を聞くか、力自慢の女性と腕相撲するか。あなたならどちらを選ぶ?」という広告コピーが付いている。

同広告には、アイドル時間のスキャンについて Kronenberg 氏から話を聞くか、それともロデオマシンに乗るか、という選択肢のバージョンや、キーロガーについて話を聞くか、それとも酒場のけんかに加わるか、という選択肢のバージョンもある。

ウェブルートのセキュリティ ソフトウェア製品は価格が 30 ~ 80 ドル。同社が目指すのは、競合製品ではなく自社製品を買ってもらう、ということだけではない。お金を出して有料製品を買ってもらうこと自体も課題になっている。現在では、無料のウイルス対策ソフトウェアも手に入りやすいからだ。

市場調査会社 Mintel の 2009 年の調査によると、ウイルス対策には喜んでお金を払いたいと考えているコンピューター ユーザーは、全体のわずか 38% にとどまる。

セキュリティ ソフトウェア大手のシマンテックも、Norton Internet Security の米国のテレビ CM でユーモア路線を取り入れている。俳優 David Hasselhoff 氏、同 Dolph Lundgren 氏、1980 年代に人気を集めたメタル バンド Dokken など、有名人を起用した CM だ。

各出演者の CM それぞれに、パソコンでおなじみのダイアログ ボックスをもじった「許可」バージョンと「拒否」バージョンがある。許可ボタンと拒否ボタンのどちらを選んだかに応じて、有名人と並んで登場した標的の運命が変わる。たとえば、Hasselhoff 氏の CM では、同氏の横に首振り扇風機がある。「許可」バージョンでは、同氏がかけた水で扇風機が火を吹き、爆発してしまう。「拒否」バージョンでは、扇風機ではなくプレッツェルだと思った同氏が手を伸ばすと、再び扇風機の形に戻り、同氏の指を切り落としてしまう。

CM 制作は、広告会社 Publicis Groupe 傘下の Leo Burnett USA と Arc Worldwide が担当した。

広告会社 WPP グループの Kantar Media によると、シマンテックが 2009 年に投じた広告費は 2700 万ドル。一方のウェブルートは 130 万ドルだった。だが 2010 年は、ウェブルートも広告費を大幅に引き上げる。同社 Benham 氏によると、今回の新キャンペーンだけで 450 万ドルを投じ、合計では約 600 万ドルに達するという。

「広告を少しずつ増やすのでは、成長も少しずつになってしまいます。実際、取締役会への説明でも、そのような表現を使いました。飛躍的な成長を目指すなら、大幅な投資が必要なのです」と Benham 氏は話す。